第87回

2012年11月2日(金)

トルコ漫画の展開の中に見る「キャラクター」の誕生と消失

――伝統的影絵芝居カラギョズからもたらされた道化の機能と変容――

横田吉昭(東京大学大学院総合文化研究科博士課程超域文化科学専攻表象文化論分野)

[発表要旨]

日本と異なる漫画文化の展開と編成を持ち、キャラクター文化が希薄なトルコ共和国において、19世紀後半の西欧からの漫画導入後、ナショナリズムの醸成にともなってキャラクターが生まれたことを取り上げる。「キャラクター」とは、日本で見られるような漫画の主人公から、サンリオなどのキャラクターグッズ、アイスの「ガリガリ君」のような商標マスコット、人物あるいは類似の動物などの図像のあらゆるものを指す。

トルコでは、最初期の漫画に伝統的影絵のカラギョズの図像を流用したが、このカラギョズは、道化としての機能を持つがゆえに、風刺漫画にスムーズに導入しえた。しかし、ナショナリズム形成の推移のもと、変容を迫られて本来の道化的機能を十分に果たしえずに、漫画から消失してしまった。

コメンテーター:佐々木紳(東京大学大学院人文社会系研究科イスラーム地域研究部門特任研究員)