第21回

【日時】2004年1月24日

ハワイ特集

古賀 まみ奈 (東京大学大学院 文化人類学研究室 修士課程)

【発表要旨】

本発表は、フラを愛好する日本人女性に注目する。日本人のフラ愛好者数は1980年代以降上昇し、2003年現在、10万人は下らないと推定される。なぜ彼女たちは異文化の伝統舞踊を習得しようとするのだろうか。オセアニアに多数分布する「伝統文化」の中で、ハワイの伝統舞踊であるフラが日本人の間に一定の認知を受けている背景には、アメリカ合衆国という母体のもつ圧倒的な政治・経済力、ハワイの観光産業の興隆、日本人の経済的優位性、「楽園」を演出し続けるマス・メディアなどと不可分の関係にある。筆者が今回試みるのは、フラという舞踊自体の歴史的特性と、日本人女性の身体観という、ミクロな視点に立脚した分析である。舞踊は社会的文化的構築物であり、それを踊る身体に対して様々な制限を要求するものである。新たに伝統舞踊を身にまとう人々にとってその規定はどのような意味を持つのだろうか。

本発表において、「フラを踊る日本人女性」という現代的現象を、それらがいかなる社会的条件付けの中で生成し、個人がいかなる関係性の中からその選択を行っているのかを解き明かす。そして、伝統舞踊自体においてどのような捨象・付与・読み替えがなされているのか、また、伝統舞踊の習得・実践の場では実際に何が行われているのかについて、分析を行なう。

フラを踊る身体:日本人フラ愛好者の事例研究

ハワイにおける離婚後の子の監護に関する多元的紛争処理システムについて: ho'oponoponoプログラム導入を中心に

三澤 寿子 (お茶の水女子大学大学院 人間文化研究科 修士課程)

【発表要旨】

ハワイ州における離婚後の子の監護紛争システムは、訴訟回避が徹底され、紛争処理方法は多元化している。いわゆるADR化である。2003年9月、家庭裁判所においてho'oponoponoプログラムが試行的に導入された。ho'oponoponoとは、もともと古代ネイティブハワイアンが用いてきた家庭内紛争処理方法である。今までインフォーマルに行われてきたho'oponoponoが、家庭裁判所手続きに基づき、子の監護と養育費紛争ケースに限定したプログラムとして適用されたことは注目に値する。近代法において周辺化されてきた拡大家族('ohana)による「親族的ネットワーク」を、単なる想像物としてではなく、現実のものとして捉え、何らかの制度的な位置づけを与えられた意味を、「子の最善の利益」の視点から再考する。

コメンテーター:木村吉博(東京大学大学院新領域創成科学研究科博士課程)