第35回

【日時】2005年10月23日

村民自治に見る世帯と親族関係―中国東北地方遼寧省農村の事例研究―

緒方宏海 (東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程)

【発表要旨】

現代中国の農村では、国が推進する村民自治制度の理念として、民主主義的な村落運営が法律で定められている。しかし、実態として宗族といった家族勢力が村民自治委員会に代わる村の実質的な代理人であり、個々人の民主主義的な村落政治への参加に対する障碍となっていることがしばし指摘される。本研究の最終的な目的は、村民自治制度とそこに生きる個人が家族を用いてどのような行動をとり、その行動が村民自治制度にいかなる影響を与えるのか、中国遼寧省の農村の事例研究から明らかにすることである。

本研究で取り上げるのは、村落政治と親族ネットワークであり、具体的な分析課題は、(1)選挙のネットワークと村民の投票行動の実態、(2)村落内における個人間の社会関係の構造、(3)個人が村落政治への参加において、親族関係の連帯に依存せざるを得ない理由である。本研究では、これら三つを

分析することで、村民自治制度と家族勢力の問題について、人類学の視点から実証的に解明し、新たな見方を提示する。

コメンテーター:松岡格 (東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程)