第6回

【日時】2002年5月18日

【発表要旨】

1990年代に入り、日本の農業の担い手として女性が重視されるようになったが、従来、農村領域における女性の問題は、苛酷な状況の告発に重点が置かれてきた。1999年の「男女共同参画社会基本法」や1998年の第3次北海道長期総合計画においては、単に女性に力をつけさせるというより、力をつけた上で男性とともに意思決定の場に臨むことを促す法律が制定され、各地でも独自の努力がつづけられている(Box 1-2)。本発表では、日本の農村社会におけるジェンダーの社会的事象について、北海道の3つの事例によって検討する。つまり、農村過疎化における「女性問題」を対象として、ジェンダーの再生産メカニズムについて考察する。具体的には、農業と農村社会における女性の社会進出の影響、とくに女性の社会的役割の変化を問題にする。本研究の分析における、北海道の農村社会におけるジェンダーおよび性別分担の問題とらえる視点は、次のようなものである。すなわち、男女関係の問題を単に活性化政策の問題(第2章)としてとらえるだけではなく、教育(第3章)、経済や労働(第4章)を含む文化全体における近代化(modernization)の問題としてとらえることである。

農村の過疎化におけるジェンダー問題に関する研究-北海道を事例として

モハーチ・ゲルゲイ (東京大学大学院文化人類学研究室博士課程)

環境に配慮した観光と日本の「自然観」

堂下恵 (東京大学大学院文化人類学研究室博士課程)

【発表要旨】

環境に配慮した観光は近年急速に発展し学術研究も進みつつあるが、この観光形態による新たな環境破壊や社会間格差の悪化など問題点はまだまだ多い。今後は、より環境保護に効果的な点を探究することはもちろん、各観光地域の社会・文化的特質に目を向けることも必要である。

この発表では、環境と調和した観光における文化・社会的側面の重要さに留意しながら、まず、現在の環境に配慮した観光の歴史的背景や問題点、エコツーリズム等の用語の定義について述べ、次に、研究対象としての「日本」の意味を簡略に説明してから、日本の自然観がどのように観光形態・運営に影響しているかを、日本の自然観に関する理論研究と実際の自然体験・学習ツアーの分析から説明する。最後に、発表者の博士研究である日本型エコツーリズムの模索について言及し、参加者の様々な意見を伺いたい。