第36回

【日時】2005年12月17日

重層的世界におけるジェンダーの再編と自己の再定義

―パキスタン人ムスリム移民の妻たち

工藤正子 (青山学院女子短期大学非常勤講師)

【発表要旨】

本発表は、1980年代から90年代にかけて来日したパキスタン人を夫とする日本人女性を対象に、国際労働移動を契機とした通婚において、ジェンダーや親族の関係性がいかに再編され、そこで自己がいかに再定義されていくのかを明らかにしようとするものである。

近年、トランスナショナルな女性の再配置への関心が高まり、家事労働者などを中心に、自らが国境を越える女性たちについて研究は蓄積されつつあるが、「外国人労働者」と結婚し、自社会を拠点に生活する女性たちの研究は稀少である。移民を受け入れる社会の成員である彼女達が自社会にいながらにして経験する「越境」には、ジェンダーや宗教などの複数の差異がいかに連動し、それが彼女達の自己の再定義にいかなる影響を及ぼしているのだろうか。

こうした問題意識から、本発表では、対象女性たちの日常を構成する重層的な生活の文脈を明らかにした上で、国境を越えて展開する「家族」形成におけるジェンダーの再編や、結婚を機にイスラームに入信する彼女たちのムスリムとしての自己像の構築の過程を明らかにしようと試みる。

コメンテーター:

五十嵐泰正 (日本学術振興会特別研究員PD:一橋大学)

福田友子 (東京都立大学大学院社会科学研究科社会学専攻・博士課程)