第38回

【日時】2006年3月26日

民族という名の『磁場』 ~F.Znanieckiの『機能構造主義』と民族理論のかかわり~

仲津由希子 (東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程)

【発表要旨】

19世紀末以降、ポーランドは大きな社会変動の時期をむかえていた。農村部から都市部への労働力の流出などにともない急速に変貌を遂げていく農村社会をとらえようとした当時の研究業績のひとつに、F.ZnanieckiがW.Thomasと協力して執筆した『ヨーロッパとアメリカにおけるポーランド農民』(1918-1920)がある。シカゴ社会学の文脈でのみ語られることが多い同著だが、実はポーランド農民に関する「ポーランドの歴史家・人類学者・民族誌家・経済学者のおこなったそれまでの組織的な研究の成果」でもあった。つまりポーランドの学問的・理論的発展上に位置づけられる一冊でもあったのである。

本報告では、ポーランド社会学者としてのZnanieckiの相貌を意識しながら理解社会学やシステム論的な外観をもつかれのの社会学理論(上述書と1934年『社会学の方法』)ならびに、かれの研究のもうひとつの柱であった民族理論(1952年に完成)がどのような理論的接合性を有していたのかを検討していく。これは、人類学とも接点の強い民族社会学と、今日、再評価の高まるシカゴ社会学との接点をみきわめていく作業にもつながるはずである。

コメンテーター

吉岡潤 (津田塾大学学芸学部国際関係学科助教授)

渡邊日日 (東京大学大学院総合文化研究科講師)

木村真 (フェリス女学院大学非常勤講師)