第23回

【日時】2004年4月18日

修士論文構想中間発表会(1)

後期資本主義と移住経験―日系ブラジル・トランスナショナリズムをどう捉えるか

佐々木剛二 (東京大学大学院文化人類学研究室修士課程)

【発表要旨】

本論文では、グローバリゼーション下における人々のトランスナショナルな文化的実践を概念化しようとする近年の人類学の理論的展開を批判的に検討しながら、いわゆる「日系ブラジル人」の日本―ブラジル間の出稼ぎ移住民の諸経験をどのように捉え ることができるかについて考察を行いたい。

理論編では、特に、通信・移動技術の飛躍的進歩にともなって生じている文化の脱領土化の問題と人類学の伝統的な分析概念をめぐる葛藤を再検討しながら、現代の移住研究において多元的なネットワーク(組織網)とそれらを媒介するハイブリディティ(非二元的な属性のダイナミズム)という分析視角を同時に導入することが不可欠であることを中心に論じる。

実証編では、そうした分析視角を基礎に、まず、日本における「日系ブラジル人」 がいかに現代的技術の使用を通じて独自にトランスナショナルで線的な社会的回路を形成しているかを論じ、さらに、彼らが「日本人」、「ブラジル人」、「日系人」、 「ガイジン」などの属性のラベリング/スイッチング、及び日本語とポルトガル語の 使用を介してさまざまな社会的回路の間を行き来する実践について考察を行う。

台湾先住民・漢族・日本人の三者関係をめぐる人類学的研究

周麗文 (東京大学大学院文化人類学研究室修士課程)

【発表要旨】

台湾の植民地研究においては、「日本人・漢族」もしくは「日本人・先住民」に分けて論じられることが多いと思われる。現在の台湾の民族問題を論ずる場合、「漢族・先住民」として分けられるが、植民地時代の日本人の影響力も重要視されてきた。「台湾先住民・漢族・日本人」という三者を連続的にとらえることはどこまで可能なのか。植民地時代における先住民と漢族の歴史を一様に論ずることは不公平だが、日本植民者との関係性を通して両者の関係はどうとらえられるのか。以上の二つの設問は本論文の問題意識となる。具体的には、植民地時代の資料をもとに、土地・医療/衛生・法律の問題を取上げて植民者の目を通して見られる両者の関係はいかなるものかということから論じたい。

人類学における子どもとその養育に関する研究再考

竹田季里 (東京大学大学院文化人類学研究室修士課程)

【発表要旨】

1980年代から、日本では不登校、いじめ、非行、家庭内暴力などが社会問題になっており、そうした少年問題の原因が、幼児期にあると言われることも多い。また、その一方で、現在は「子どもを愛せない」親や、幼児・児童虐待のニュースが頻繁に聞かれるようになった。乳幼児と、その養育のあり方が今、問われているのだ。このような乳幼児の養育に対し、人類学の見地から何を言いえるのか。人類学における乳幼児とその養育に関する研究を振り返り、現前する問題に対する限界を乗り越える新たな視点を考察する、というのが本論文の目的である。「文化とパーソナリティ」から発達心理学への流れ、そしてそれに続く最近の民族小児学、他方で、アメリカにおける教育人類学や教育社会学、家族社会学を中心にレヴューする。人間の個体能力の発達や、状況への参加概念を踏まえ、「関係性の身体化」という視点を考察する。