第9回

【日時】2002年9月3日

佐藤まゆら (東京大学大学院文化人類学研究室博士課程)

【発表要旨】

マルタではキリスト教徒であり、ヨーロッパの一員であることを根拠付ける歴史認識が階層の壁を越えて浸透し、世俗化がすすんでいるとされる現在に至るまで受け継がれてきた。従来の「記憶の政治学」の枠組みでは、「マルタ史」も権力者のイデオロギーないしは弱者のアイデンティティ・ポリティクスとみなされてしまうであろう。しかし本発表ではその限界を指摘し、宗教的信仰心と集合的自尊感情(対自関係)という心理的要因からの分析を試みる。

「記憶の政治学」の及ばないところ--マルタ人の歴史認識を事例に

社会主義経験のジェンダー差をさぐる:ウズベキスタンのムスリムの事例から

菊田悠 (東京大学大学院文化人類学研究室博士課程)

【発表要旨】

ソビエト社会主義時代に「因習的イスラムからの女性解放」が叫ばれたウズベキスタン。そこでは現在、ソビエト時代のイスラム的信仰実践や民族的儀礼を回顧する語りに主に男女で差異が見受けられるようである。本発表ではこのようなウズベキスタンでの調査を整理しつつ、ムスリム地域で社会主義の経験にジェンダー差があるとすればそれはなぜか、いかに捉えることが出来るかを考える。

コメンテーター:松前もゆる(埼玉大学非常勤講師)