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第94回

2013/07/05 6:39 に 院生会2 が投稿   [ 2015/08/05 0:32 に 院生会1 さんが更新しました ]
※終了しました

【日時】2013年7月20日(土) 15:00開始
【場所】東京大学駒場キャンパス 14号館407号室 < http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam02_01_13_j.html >
*エントランスカードをお持ちでない方は、テニスコート側の外階段より4階までお越しください。

「商品をつくるという営為」



今回の研究発表では、「商品をつくること」に注目することで、いかに商品としてそれらがつくられ、またつくられていく過程や場面で何が表出してくるのか、そして商品に何が込められていくのかを、二つの発表を通じて考えていきたい。二つの発表で注目する事例は、一つは旅行(田中)であり、もう一つは供物(岡本)である。二つの事例の間には、例えば物理的に見えるものと見えないものということや、商品をつくる場面の在り方など性質的な違いが多々ある。その上で、「商品をつくること」を共通項に事例を考察することで、商品そのものを考察するだけではない、商品のつくられ方、商品をつくる場面での人間関係や組織、その商品が完成する/した場面や消費される場面での商品と人々との関係など、商品の周辺に対する考察を行う視座を二つの発表から模索していきたい。

「組み合わせる、つなぎ合わせる、組み替える―中国広東省に進出した日系旅行会社における手配の仕事のやり方」

田中孝枝(東京大学大学院)

【要旨】
 産業に関する人類学的な研究は、労働の中で人々が用いる知識や技能に着目することで、労働研究に新たな視角をもたらしてきた。本発表は、このような知識と技能への着目を背景に、旅行会社において無形の商品をつくる人々の仕事のあり方を考察する。具体的には、中国広東省に進出した日系旅行会社を事例として、オフィスにおける旅行商品の生産・販売工程で、最も基本的で「簡単」な仕事とみなされていた手配の仕事を考察する。手配は、「お客さん」と「現地」の間に入り、ホテルやレストラン、ガイドなど旅行に必要な他社の商品を「組み合わせる」仕事であり、会社のすべての業務に関わると同時に、分業のあり方も不明確であった。旅行業は、「他人のふんどし借りてる商売」であり、また、手配をする従業員は「お客さんが行くその時そのへん」で何が起こる/ったかは結局確認できない。そのため、やり取りする企業や人とのつながり、組み合わせる各商品のあり方が仕事のやり方に影響を与える。

 本発表では、旅行商品をつくるにあたって、各従業員がどのように「現地」とつながるのか、また、手配の「経験がある」ということが何を意味するのかを手配能力への評価、流儀の差異がどのように「見える」のかから考察する。そして、「熟練の感覚」の一側面として表れる「責任をもってやる」という仕事のやり方が、決定とその主体を不確定なものにとどめようとするものであることを指摘する。

呪物店で供物となるデスパチョをつくる――ペルー共和国、クスコ都市部の民間信仰にみられる活動より

岡本年正(東京大学大学院) 

【要旨】
 ペルー共和国、クスコの民間信仰での儀礼活動では、大地への返礼(かつ請願)儀礼(pago a la tierra)が頻繁に行われている。儀礼では大地へ供物が捧げられるが、その供物となるものとして、大地へのデスパチョ(despacho para la tierra)がある。デスパチョとは、儀礼で使用されるものが詰められた包みの総称であり、大地への返礼儀礼であれば大地のデスパチョというように、各種の儀礼にそれぞれ対応したものが存在している。これらデスパチョは、クスコ都市部では呪物店でつくられ販売され、流通している。近年は、デスパチョは儀礼の一要素であり、デスパチョがなくては儀礼ができない状況がある。先行研究においては、デスパチョはそこにあるものとしてみなされ、象徴的な解釈や民間信仰の一部としての説明はなされるが、それらがいかにしてつくられて販売されるかといった、より物質的な視点からは分析されてこなかった。しかしながら、発表者が特に注目する大地へのデスパチョは、内容物の変化やそれらの集められ方など、文脈に位置づけるような従来の分析を超える側面を多く含んでいる。発表者はこの点から、等閑視されているクスコ都市部での民間信仰を分析し返す余地があると考える。

 そこで本発表では、儀礼において供物となる大地へのデスパチョという商品が、カテゴリーとしていかに作り出され、一つ一つのそれは、いかに、そしてどのような関係の下でつくられているかを分析することで、商品としてのデスパチョの価値やクスコ都市部における民間信仰のあり方(変容やその兆し)を考察していく。ここにおいて、商品と人々の関係、商品の価値についての考察を進めていきたい。