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第83回

2012年3月29日(木)

人体を立ち上げる―基礎医学教育における実習室についての微視的考察

梅田夕奈(山口大学医学部医学科)

[ 発表要旨 ]
医学生はどのようにして、西洋医学独特の人間観を身につけるのか。この問いに対しては、医学生の文化を描いたH.・ベッカーらによる古典的モノグラフ、さらに医療人類学分野では、医学教育の観察を通じて、「医学はいかにしてその対象を構成するのか」をあきらかにしようとしたB.・グッドによる先行研究がある。


これら先行研究を受けて、本発表では、グッドと同様、生物医学のなにか本質的な特徴は、新参者がそれを習得していくプロセスにおいてよく観察されるはずである、という想定にもとづき、医学生が医学を学んでいくプロセスを追う。 しかし 発表者自身が、観察者ではなく、医学生であるという立場を反映して、グッドの分析に基本的には同意しながらも、本発表は、岩城見一のイメージ論を援用しつつ、医学教育の根本に存在する、医学の言葉に落とし込まれる以前のより混沌としたイメージと、解剖学書といったより整頓された医学的イメージとの往還について語ることになる。さらに、グッドが指摘するように、医学教育が人間の生活世界を捨象して人体のイメージを構築していくことに強く同意しながらも、「四方位」に対して閉ざされた実習室において、医学生が、それでも「ご遺体」を大事にする方法を模索していくこと、それが「ご遺体」の全体を記憶するという、解剖学的イメージを構築することそのものにつながることを指摘する。