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第78回

2011年7月2日(土)

「家族/経営」という困難―複数の論理が併存する企業経営をめぐって―

塚原伸治 (日本学術振興会特別研究員PD/東京大学東洋文化研究所)

[ 発表要旨 ]
 グローバル経済の重要な担い手のひとつとなることに成功した日本企業の多くが、一方でローカルかつ伝統的なものを内側に温存しつつ発展を遂げたことは、合理的経営の常識に反するという点で、これまでも注目されてきた。
 特に、企業の規模にかかわらず、現代においてもなお企業経営における家族志向は強い。経営学における(主に機能主義的な)組織シンボリズム論が論じてきたように、家族経営を維持することについては、対企業内的にも対外的にも一定の意義はあって、企業構成員の統率や信用の獲得の面で、有用であることも多い。だが一方で、家族(あるいはイエ)と企業という、いずれも独立して持続を志向するような2つの論理がそこにあるのであって、両者の志向がいかにも一致しているかのように扱ってしまうことには不満が残る。日本の企業経営においてイエの論理と企業の論理の親和性が高いことは確かであるが、それでも2つは別のものである。
 本発表では、400年の歴史を通じて強い家族経営志向が見られる「近江商人」を対象とし、複数の論理が一致しないままに併存する状況について論じ、そのような状況下における経営者の選択について考察する。