日本の中学生の非伝統的ジェンダー一人称を巡るメタプラグマティクス
宮崎あゆみ(国際基督教大学教養学部非常勤/教育研究所研究員) [ 発表要旨 ]
人々は、それぞれのコミュニティーの中で、自らの言語実践に豊かな意味付与をしながら文化を営んでいる。話者による自分自身の言語実践への意味付けは、従来の言語研究では、誤りであることが多く研究に値しないとして軽視されてきたが、シルバーステイン(1976等)は、人々が自らの言語実践に加える解釈をメタプラグマティクスと呼び、これこそが、言語が社会・文化・政治的プロセスを映し出す鏡となる重要な研究対象であると主張し、メタプラグマティクスは言語人類学の重要な研究テーマとなった。
本発表では、中学校における長期のエスノグラフィーを基に、どのように生徒たちが、「女性語」「男性語」の枠組みを超えた非伝統的ジェンダー一人称を使用し、自らの一人称実践に解釈を加えていたかについて分析する。生徒たちは、様々な一人称を使用し、日常場面でお互いの言語実践に対する多様な解釈を繰り広げて交渉していた。生徒たちの創造的な解釈の営みからは、ジェンダーの言語イデオロギー(シェフリンら編1998等)が、挑戦され、攪乱(バトラー 1997)され、シフトするプロセスが浮き彫りになった。
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