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第74回

【日時】2010年12月9日(木)

花街の景観/花街という空間――祇園甲部の土地共同所有を事例に

松田 有紀子 (立命館大学大学院)

【発表要旨】
 花街とは、芸妓と芸妓に関連するサーヴィス業――芸妓を育成する置屋、派遣先である料理屋、茶屋など――が「集積して成立する場」である。その範囲はか ならずしも行政区分とは重ならない。明治時代から全国各地に成立したが、現存する花街の多くは、芸妓の営業地域として機能してはいても、ひとつの街区とし てまとまりある景観は失われている。本報告では花街・祇園甲部に注目し、景観の維持が花街の維持にいかなる意味をもつのかを考える。 
 京都市東山区に位置する祇園甲部は、茶屋の並ぶ「伝統的な」景観を広範囲に渡って維持する特異な花街(かがい)である。中でも1999(平成11)年に 京都市により「歴史景観保全修景地区」に指定された祇園町南側地区は注目に値する。明治初年に祇園甲部の茶屋経営者らが設立した学校法人八坂女紅場学園 は、現在に至るまで同地区の地所を一元的に所有し賃貸運用している。土地を個人で所有しないこの仕組みは他の花街には見られないものである。今回は史料分 析とオーラルヒストリーの分析を通じて、祇園甲部においてこのような特殊な土地所有制度が確立された背景と、それによりいかなるアドバンテージを得ている のかを明らかにしたい。