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第27回

【日時】2004年6月26日

債務労働の女性化:南インドのアンドラプラデシュの事例


佐藤純子(東京大学大学院文化人類学研究室博士課程 )


【発表要旨】
本発表は、債務労働がなぜ無くならないのかを議論する前段階として、南インドのアンドラプラデシュ州の農業労働において、債務労働が男性から女性へと移行した変化を取り上げる。債務労働とは一言でいえば、カネを借りたカタとして仕事をし借りを返す労働である。債務労働の撤廃を目標とするさまざまな国際的プログラムや国家プログラムの実施にもかかわらず、債務労働はなくなるどころか、この例においては増加し、一見あるグループの債務労働者の脱却が、ほかのグループの債務労働者化にとってかわっているように見える。

債務労働廃止に関係する政策や経済問題については広く諸社会科学分野が研究するものの、イデオロギーという資源を人々が利用し、特定の社会的地位にはめこまれた債務労働から脱却することを図っているとの指摘は見当たらない。本発表はそのように問題を捉えなおし、「債務労働」そしてジェンダーという社会的身分のポリティクスに必要な資源配分をめぐる人々の競争と行動を、多層的な社会変化と照らし合わせて説明する。

タイに向う日本人の若者たち:バンコク・チェンマイに暮らす単独移住者の民族誌的研究


小野真由美(東京大学大学院文化人類学研究室博士課程 )

【発表要旨】
本発表では、近年の新しい傾向としての移民のあり方である移住をテーマに、タイのバンコク・チェンマイに移住する日本人の若者を事例として取り上げ、個人の自由意志に基づく日本人の単独移住者の移住のプロセスを考察する。 

グローバリゼーションの進行する現代社会において、人々の生活の場はますます地球規模に拡大しつつある。近年、日本人の海外渡航者数は毎年15万人を上回っているが、その一方で、海外で生活する日本人の数も年々増加し、海外在留邦人数も2002年度には87万人を超え、日本人の海外移住のパターンも多様化している。本研究で扱うタイに向う日本人の若者は、従来の日本人の出移民研究が対象とした明治時代以降の政府主導の移民政策による経済移民や、70年代以降の会社移民では捉えられない新しい人の越境のパターンである。タイ社会においては、永住者、駐在員、留学生、観光客、現地採用の労働者、自営業者など多様な日本人が在留し生活している。本発表では、移住者の移住のプロセス、移住の時間、移住者のまなざしの3点から、タイに向う日本人の若者の移住を説明する。