研究会の記録‎ > ‎2003年度‎ > ‎

第22回

【日時】2004年3月28日

病院チャプレンとスピリチュアルケア



古澤有峰 (東京大学大学院人文社会系研究科博士課程/東京大学21世紀COEプログラム「死生学の構築」特任助手 )


【発表要旨】 
チャプレンとは、辞書的には「礼拝堂付きの牧師(司祭)、(大学・病院などの)施設付きの牧師、軍付きの(従軍)牧師、(刑務所の)教戒師」のことを指す。この様にチャプレンは本来、医療現場に限定された職種ではない。しかし、近年アメリカでは、特に医療現場におけるチャプレンの活動の重要性が再考されている。

病院はある種のコミュニティーである。また、そこは医学モデルが非常に強力な支配力を持つ場所でもある。そのような病院の中に、宗教的な役割を担ったチャプレンの活動を必要とするニーズが存在する。それもかつてのように宗教的儀礼を執行することだけではなく、むしろ患者や家族の苦しみや悩みに寄り添うという役割が求められている。

本研究においては、現代における病院というコミュニティーの性格の大きな変容とともに、病院チャプレンという伝統的な役割が、どのように新たな変容を遂げたのかについて、医療人類学的視点から考察を行う。

生理休暇の誕生 -近代日本の月経と生理休暇要求の言説史-


田口亜紗 (成城大学大学院文学研究科博士課程)
 

【発表要旨】
日本の労働基準法に規定されている「生理休暇」制度は、医師の診断書を要する欧米の病理休暇とは異なり、当事者自身の申請で取得できる権利として誕生した。本発表は、当初世界にも類をみなかったこの制度がどのように成立したのかについて、主に近代日本の月経をめぐる言説の変遷を「医療化」という視点から分析することによって明らかにする。 

月経という女性の身体現象をめぐっては、大正期以降、具体的な医療技術や専門人員の配備などをともなった医療化が進められていく。が、生理休暇は、月経を管理や治療の必要な現象とみなす医療化に抗するかたちで要求され、制度としても結実した。その制度成立に至るまでの歴史には、月経を医療化しようとする言説を受容しつつも、月経をあくまでも病気ではないものと捉えながら自分たちに有利な労働環境を確保しようとする、過去の女性たちの動態的な姿をみることができる。