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第17回

【日時】2003年6月21日

考古学特集

インカ帝国における地方支配


渡部森哉 (日本学術振興会特別研究員[PD])


【発表要旨】
インカ帝国は先スペイン期アンデスに繁栄した最大の国家である。従来、インカの歴史についてはスペイン人が残した記録を基に遡及的に再構成されてきたが、こうした方法に限界があることはいうまでもない。スペイン人によって紙に記された情報は、インフォーマント、通訳、記録者と幾重ものプロセスを経た結果である。こうした歪んだ歴史像を批判検討するため、現在では、構造分析や考古学データからの検証など多角的な視点から研究が進められている。

インカ研究のテーマは多岐に渡るが、本発表では、インカ帝国の地方支配を具体例として取り上げ、インカの歴史を再考したい。

従来インカの地方支配については従来次のようにいわれてきた。インカは、地方政体を暴力によって、あるいは懐柔し、征服し、その政治構造を保持したまま統治下に組み入れたのである、と。ペルー南高地に繁栄したルパカ王国、ペルー南海岸のチンチャ王国などがその例である。発表者はいわゆる地方王国のうち、ペルー北部高地にあったクイスマンク王国を研究テーマとして調査を行ってきた。従来いわれてきたインカの征服過程が考古学データとどのように合致するのか、あるいは齟齬があるのか、 1999以降発掘調査結果を基に考察する。