第119回 「文化人類学を自然化する」 ・日時:2021年3月21日(日)13:00~18:00 ・オンライン開催(Google Meetを予定、Zoomに変更の可能性あり) ・参加方法:3/19(金)までに下記までお申し込み下さい。 国立民族学博物館の共同研究「文化人類学を自然化する」の成果発表の一環として開催いたします。 この研究会は、哲学の自然主義の流れに触発されながら、 ダーウィン的企図のもと文化人類学を書き換えることを 目標として2017年に組織されました。メンバーは新旧10名の人類学者霊長類学者を含む)と、 自然主義の哲学者、 社会心理学者です。このカンファレンスで4年間の議論の成果を発表いたします。 ・発表者 第1部 基礎編(13:00-15:15) 1.山田一憲(大阪大学) 「ニホンザル集団における寛容性の地域間変異」 2.高田 明(京都大学) 「他者と同じように行為すること」 3.中川 敏(大阪大学名誉教授) 「記号の進化論:アフォーダンスからフェティッシュへ」 4.飯田 卓(国立民族学博物館) 「探索と推論の限界心理学 :アフォーダンス理論と関連性理論の架橋」 5.中村 潔(新潟大学) 「メタファーの使用と濫用」 コメント:唐沢かおり(東京大学) 第2部 応用編(15:30-18:00) 1.浜本 満(九州大学・一橋大学名誉教授) 「ヒトにおける技の複製:模倣から物語へ」 2.松尾瑞穂(国立民族学博物館) 「脱魔術化の見果てぬ夢:インドにおける呪術禁止法と信念の腑分け」 3.中川 理(立教大学) 「「なる」を可能にするもの:フランスのモン難民の事例から考える」 4.中空 萌(広島大学) 「ガンジス川が「法人」になるとき:「時代の感受性」とインスクリプション」 5.菅原和孝(京都大学名誉教授) 「狩猟採集民のできごと語りを組織する内的連鎖は因果なのか?」 コメント:戸田山和久(名古屋大学) *質疑応答はSlackにて受付(参加申込者に後日案内いたします) ・発表要旨(若干の変更の可能性があります) 第一部 基礎編 1. 山田一憲 「ニホンザル集団における寛容性の地域間変異」 ニホンザルはマカク属の中でも優劣関係が最も厳格な種として知られているが、 地域によって社会構造が異なることが明らかになってきた。 本発表では、淡路島に生息するニホンザル集団が、他地域の集団と比較して、 特異的な寛容性を持つことと、それにより協力行動を学習できたことを報告する。 2. 高田 明 「他者と同じように行為すること」 古くはプラトンやアリストテレスの演劇論から最近ではトマセロの模倣論に至るまで, 「他者と同じように行為すること」の社会的意義について,多くの研究者が刺激的な議論を展開してきた. 本発表では,言語の自然化は可能かという問いの一環として,これについて考える. 3. 中川 敏 「記号の進化論:アフォーダンスからフェティッシュへ」 当発表は、 発表者がここ数年とりくんできた フェティッシュ論を、 進化論に統合する試みである。 これまでの結論は フェティッシュは「表象しない」記号であり、 その点で抽象絵画に比することが できるというものである。 この発表ではそのようなフェティッシュが生物の進化の中で アフォーダンスから発生したことを描きたい。 4. 飯田 卓 「探索と推論の限界心理学 :アフォーダンス理論と関連性理論の架橋」 民族誌の解釈にはコミュニケーション理論がしばしば援用されるが、ヒトとモノとの関係までは扱えない。 そのためには、関連性理論とアフォーダンス理論を架橋することが有効であろう。 両理論は、探索や推論といったヒトの能動性を重視し、行動の可塑性と多様性を説明しようとする点で共通する。 5. 中村 潔 「メタファーの使用と濫用」 自分たちとは異質である(かもしれない)概念をより良く理解するための記述を作り上げる民族誌という営為は, 人類学の内部のそれと記述者と読者(そして,記述の対象)とのそれという,二重(多重)の コミュニケーションのなかにある。そこでの比喩の使用(と濫用)も,そこで二重(多重)である。 第二部 応用編 1. 浜本 満 「ヒトにおける技の複製:模倣から物語へ」 かつて文化人類学にとってほぼ不可能とも見えた自然化は、経験論的実証主義 の賞味期限切れによって、今や その着地点を模索することが可能となった。社会や文化の、人類学にはあまりにも自明な構成要素 (模倣、規則、物語など) も、生物全般を視野に入れた統一的な観点から眺め直すことが可能だろう。 2. 松尾瑞穂 「脱魔術化の見果てぬ夢:インドにおける呪術禁止法と信念の腑分け」 インドにおける合理主義運動において、近年焦点化されているのが呪術禁止の法制化である。 合理/非合理、信仰/迷信、善/悪をめぐる議論で展開されるのは、信念の腑分けであると同時に、 法制化に向けた現実的な落としどころをめぐる攻防である。 本報告では、市民運動となった反呪術の取り組みから、信念の生態学の一端を描き出す。 3.中川 理 「「なる」を可能にするもの:フランスのモン難民の事例から考える」 本発表は、ラオスから難民としてフランスに来て農民となったモン(Hmong) を事例として、 平等主義的な生き方の生成とそれを可能にする条件について検討する。 事例からは、一方で「分裂生成」や「(反対)模倣」の、他方でANT的な「装置」の理論的有用性が見えてくる。 本発表では、これらの 概念を自然化の議論に接合できるか考察する。 4. 中空萌 「ガンジス川が「法人」になるとき:「時代の感受性」とインスクリプション」 自然物に法的な人格を認める法制度や裁判が現代インドでなぜ実現し、生き残り、トレンド化しつつあるのか。 本発表では、「時代の感受性」(池上俊一『動物裁判』(1991)より)を支える具体的ネットワークの形成 ーー「装置」に媒介された複数の関心や諸要素の動員ーーという視点からこの問いを考えることで、 ANTと「自然化」の接点を探りたい。 5. 菅原和孝 「狩猟採集民のできごと語りを組織する内的連鎖は因果なのか?」 SF的な問い。時間旅行者はアフリカ乾燥サヴァンナで原初の狩猟採集民と遭遇する 。その言語を理解できたとして、 かれらが経験したできごとincidentに関する語りを可知的なものとして了解しうるのか? わたしが自明視する因果関係は可知性の手がか りとなるのか? この問いをグイ/ガナの語りを素材に検証する。 ・お問合わせ:c.anthro.workshop.info@gmail.com(現代人類学研究会事務局) |